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この記事について
この記事を書いている私(元借金王子)は、約750万円の借金を抱え、弁護士事務所に依頼して小規模個人再生をしました。再生計画で決まった返済額は約150万円で、2020年5月から3年間返済し、2023年5月に一度も遅れることなく完済しました。
前半は個人再生の制度の説明、後半は私の体験談です。制度の説明は、裁判所の案内と民事再生法の条文で確認しています(最終確認日:2026年10月27日)。
この記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、法律相談ではありません。実際に使えるかどうか、いくら返すことになるかは、借金の額・収入・財産などによって一人ひとり違います。具体的な判断は弁護士・司法書士や法テラスに相談してください。
「個人再生をすると借金が5分の1になる」と聞いたことがあるかもしれません。私の場合は、借金総額と返済総額を比べると約5分の1になりましたが、これは誰にでも当てはまるわけではありません。減る割合は借金の額などで変わり、ほとんど減らないこともあれば、10分の1まで減ることもあります。
この記事では、個人再生の仕組み、どのくらい減るのか、使える人の条件、自己破産との違いを、できるだけわかりやすく説明します。
個人再生とはどんな制度なのか
個人再生は、裁判所を通して借金を大きく減らし、残りを原則3年で分割して返していく手続きです。民事再生法という法律に定められた、個人向けの手続きです。
裁判所の説明を簡単にまとめると、次のようになります(裁判所「個人再生」)。
- 借金の返済が難しい人が、将来の収入から返していく計画(再生計画)をつくる
- 裁判所がその計画を認める(認可)
- 計画どおりに返し終わると、残りの借金は免除される
自己破産と違って、財産を必ず手放さなければならない手続きではありません。また、条件を満たせば、住宅ローンが残っている家を手放さずに手続きできる場合があります(「住宅資金特別条項」。あとで説明します)。
減らない借金もある
すべての支払いが減るわけではありません。たとえば次のようなものは、原則として減額の対象になりません。
- 養育費や婚姻費用など、家族を扶養する義務にもとづくもの
- わざと(悪意で)相手に損害を与えたことによる損害賠償
- 税金や国民健康保険料・年金保険料などの公的な支払い
また、保証人がついている借金は、本人の借金が減っても保証人の支払い義務は減りません。債権者は保証人に請求できます(民事再生法177条2項)。
借金はどのくらい減額されるのか
返す金額(最低弁済額)は、次のいちばん高いもので決まります。
- 借金の額で決まる基準額(下の表)
- 清算価値:今持っている財産を全部お金に換えたらいくらになるか
- 可処分所得の2年分(給与所得者等再生の場合だけ)
借金の額で決まる基準額
| 借金の額(住宅ローンなどを除く) | 最低限返す額 | 例 |
|---|---|---|
| 100万円未満 | 全額(減らない) | 80万円 → 80万円 |
| 100万円以上500万円以下 | 100万円 | 400万円 → 100万円 |
| 500万円超1,500万円以下 | 5分の1 | 750万円 → 150万円 |
| 1,500万円超3,000万円以下 | 300万円 | 2,000万円 → 300万円 |
| 3,000万円超5,000万円以下 | 10分の1 | 4,000万円 → 400万円 |
このように、「最大5分の1」ではなく、借金の額によって返す額の決まり方が変わります。100万円未満なら減りませんし、3,000万円を超えると10分の1になることがあります。
財産がある人は「清算価値」にも注意
個人再生では、財産を処分した場合の金額(清算価値)以上を返す計画でなければ認められません(裁判所の案内より)。たとえば借金750万円で基準額は150万円でも、預貯金・保険の解約返戻金・車などの財産が合わせて250万円分あれば、少なくとも250万円を返す計画が必要になります。
財産を取り上げられるわけではありませんが、返す額が増えることがあります。ここは個人差が大きいところです。
私の場合(体験談)
私の場合、借金総額は約750万円で、再生計画に基づく返済総額は約150万円でした。結果として、もとの借金の約5分の1になりました。ただし、減額される割合は借金額や財産の状況などによって異なります。
個人再生を利用できる人の条件
個人再生には「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2種類があります。共通する主な条件は次のとおりです。
- 借金の返済が難しくなっている
- 将来も継続して、または繰り返し収入を得る見込みがある
- 借金の総額(住宅ローンや担保で回収できる分などを除く)が5,000万円以下
- 再生計画どおりに返していける見込みがある
収入がまったくない場合は、個人再生は難しくなります。パートやアルバイト、自営業でも、継続した収入があれば使える可能性があります。
小規模個人再生と給与所得者等再生の違い
| 小規模個人再生 | 給与所得者等再生 | |
|---|---|---|
| 向いている人 | 自営業の人を含め、継続した収入がある人 | 会社員など、給料のように安定した収入がある人 |
| 債権者による決議 | 書面で決議する。全員の同意が必要なわけではなく、反対と回答した債権者が人数の半数に満たず、かつその債権額が総額の2分の1を超えなければ、可決したものとみなされる | 決議はない(債権者は意見を述べるだけ) |
| 最低限返す額 | 基準額と清算価値の高いほう | 基準額・清算価値・可処分所得2年分のいちばん高いもの |
| その他 | - | 過去7年以内に給与所得者等再生や自己破産の免責などを受けていると使えない |
可処分所得とは、手取り収入から、法律(政令)で決められた最低限の生活費を引いた残りのことです。給与所得者等再生は債権者の決議がないため反対多数で否決されることはありませんが、その代わりに返す額が高くなりやすい傾向があります。どちらを選ぶかは、依頼する専門家と相談して決めることになります。ちなみに私が使ったのは小規模個人再生でした。
住宅ローンがある人(住宅資金特別条項)
住宅ローンがある家を残したい場合は、「住宅資金特別条項」(いわゆる住宅ローン特則)を使える場合があります。住宅ローンはそのまま(または返し方を調整して)払い続け、ほかの借金だけを減らす方法です。主な条件は次のとおりです(民事再生法196条・198条)。
- 本人が所有し、自分が住んでいる家であること(床面積の2分の1以上を自分の住まいに使っていること)
- 家を買う・建てる・改良するための分割払いのローンで、その家に抵当権がついていること
- その家に、住宅ローン以外の借金の担保(抵当権など)がついていないこと
- 保証会社がローンを代わりに払った(代位弁済)場合は、その日から6か月以内に申し立てること
住宅ローン自体は減らないのが基本です。家のことは事情によって大きく変わるので、必ず専門家に確認してください。
自己破産との違い
借金の整理には、個人再生のほかに自己破産や任意整理などがあります。特に比べられることが多い自己破産との違いをまとめます。
| 個人再生 | 自己破産 | |
|---|---|---|
| 借金 | 大きく減り、残りを原則3年で返す | 裁判所の免責許可決定を受けると、原則として支払う責任がなくなる。ただし、税金や養育費、悪意の不法行為による損害賠償などの「非免責債権」は残る |
| 収入 | 継続した収入が必要 | 収入がなくても使える |
| 財産 | 必ず手放す必要はない(清算価値以上を返す) | 一定以上の財産は処分される |
| 住宅ローンのある家 | 住宅資金特別条項で残せる場合がある | 原則として手放す |
| 借金の原因 | 原因による制限の規定はない | 浪費やギャンブルなどは免責が認められない事由。ただし事情によって裁判所が免責を認めることもある |
| 官報への掲載 | あり | あり |
自己破産について私が書いた記事は「自己破産と個人再生を考えた時」にあります。
個人再生のメリットとデメリット
メリット
- 借金の額によっては、大きく減らせる
- 財産を必ず手放す必要はない
- 条件を満たせば、住宅ローンのある家を残せる場合がある
- 弁護士などに依頼して、貸金業者に「受任通知」が届くと、貸金業者から本人への直接の取り立ては止まるのが一般的
- 裁判所の開始決定が出ると、借金(再生債権)にもとづく給料の差し押さえなどの強制執行は、原則として中止される。ただし、税金などの滞納処分や、住宅ローンなどの担保(抵当権など)の実行は、この中止の対象外
デメリット
- 信用情報に登録される(いわゆるブラックリスト)。一定期間、新しい借入れやクレジットカードの利用が難しくなる。期間は信用情報機関などによって違う
- 官報に名前と住所が載る(手続きの節目ごとに掲載される)
- 保証人に請求がいく。保証人がついている借金は、保証人が一括で請求されることがある
- 手続きの負担が大きい。書類集め、家計の記録、毎月の積み立て(履行テスト)などが続く
- 費用がかかる。裁判所の費用に加え、専門家に頼めばその費用がかかる
- 収入がないと使えない
デメリットについての私の体験は「個人再生で考えておくべきデメリット」に書いています。
弁護士への相談から返済開始までの流れ
裁判所の案内などをもとにした、一般的な流れです。細かい進み方は裁判所や事務所によって違います。
- 弁護士・司法書士に相談:借入先・金額・収入・家族構成などを伝える
- 依頼(受任):専門家から貸金業者へ受任通知が送られ、返済をいったん止めるのが一般的
- 書類集めと家計の管理:通帳の記録、給与明細、源泉徴収票、財産の資料などを集める
- 地方裁判所に申立て:原則として住んでいる地域の地方裁判所
- 開始決定:手続きが正式に始まる。借金(再生債権)にもとづく強制執行は原則として中止される(税金や担保権などは対象外)
- 借金の額の確定:債権者が届け出た借金の額を確認する
- 再生計画案の提出
- 書面決議(小規模個人再生)または意見聴取(給与所得者等再生)
- 認可決定:確定すると計画の効力が生じる
- 返済開始:原則3年(特別な事情があれば最長5年)。3か月に1回以上の分割払い
裁判所によっては「個人再生委員」という人が選ばれ、手続きの監督や助言をすることがあります。選ばれるかどうかは裁判所が決めます。
費用について
裁判所に納める費用は、申立手数料1万円(収入印紙)と、郵便料・予納金などです。予納金などの金額は裁判所によって違います(裁判所「個人再生」)。個人再生委員が選ばれた場合は、その報酬もかかります。
弁護士や司法書士に頼む場合は、別にその費用がかかります。多くの事務所で分割払いができるようです。費用を用意するのが難しい人は、収入などの条件を満たせば、法テラスの無料法律相談や費用の立替え制度を使える場合があります。
実際に個人再生を経験した私の話
ここからは私自身の体験です。あくまで私の場合であり、すべての人に同じことが起きるわけではありません。
体験談① 相談するまで
収入のほとんどを返済に回して、またお金を借りる、という繰り返しになっていました。
弁護士事務所に電話すると決めてから、実際に電話できるまで1週間ぐらいかかりました。怖かったです。初めて電話したのは2019年7月です。電話ではまず、どこからいくら借りているか、家族のこと、収入などをたくさん聞かれました。
詳しくは「弁護士事務所って怖いの?」に書いています。
体験談② 手続き中に大変だったこと
いちばん苦労したのは家計の管理です。家計簿をつけて毎月弁護士事務所に送り、返済していけるかを確かめる「履行テスト」が、私の場合は裁判所の認可決定が出るまで8か月ぐらい続きました。
食費は私と妻それぞれ月3万円まで。私は長距離トラックの仕事で出先では料理ができないので、カップ麺とおにぎりのような食事が多くなりました。
通帳は過去2年分の取引の記録を出し、証券会社の口座についても資料を出しました。
詳しくは「個人再生手続きでいちばん苦労した事」「個人再生手続きはできるだけ正直に行いましょう」に書いています。
体験談③ 訴訟を起こされたこと
弁護士事務所に依頼したあと、ある債権者から訴訟を起こされました。弁護士事務所からは「何もしなくていい」と言われましたが、とても動揺しました。結果として約170万円の支払いを命じる知らせが届き、怖かったです。
給料の差し押さえの通知が会社に届く可能性もあったので、事前に社長に事情を話しておきました。その後、個人再生の開始決定が出ました。私の場合は、差し押さえに進む前に間に合いました。
詳しくは「司法書士事務所さんか弁護士事務所さん」「個人再生って家族や会社にバレるのか」に書いています。
体験談④ 費用と、かかった時間
弁護士事務所に払った費用は合計558,482円でした。私の場合は個人再生委員がつかず、裁判所に行くこともありませんでした。過払い金の計算は、個人再生の費用に含まれていました。
手続きはとても長く感じました。それでも、返済をいったん止めてもらえたので、返済に追われる毎日に比べればずっと気持ちに余裕ができました。
費用の内訳は「弁護士事務所さんでの個人再生の料金(体験談)」に書いています。
体験談⑤ 家族のこと
妻には家計簿をつけてもらうなど協力が必要だったので、隠すことはできませんでした。子どもたちと両親には最初に話しました。
会社には、退職金の見込み額の書類を作ってもらう必要がありましたが、そのときは個人再生のことは言わずに作ってもらえました。
体験談⑥ 3年間の返済と完済
再生計画にもとづく返済は2020年5月に始まりました。初めて弁護士事務所に電話した2019年7月から、10か月ほどあとです。
返済額は合計で約150万円。支払いは3か月ごとに約12万円で、月にならすと約4万円です。
返済期間は3年間で、2023年5月に完済しました。3年間、一度も返済を遅らせることはありませんでした。
いろいろ大変でしたが、私は個人再生をやって良かったと思っています。
個人再生を考えている人へ
借金の悩みは、一人で抱えているとどんどん苦しくなります。私自身の経験から伝えたいのは次のことです。
- 早めに相談する:返済が遅れて訴訟や差し押さえに進む前に相談したほうが、選べる方法が多くなります
- 正直に話す:借入先の漏れや財産の隠しごとは、手続きを台無しにしかねません。言いにくいことほど早めに伝えましょう
- 個人再生がいちばん良いとは限らない:任意整理や自己破産のほうが合っている人もいます。自分に合う方法を専門家と一緒に考えてください
- お金がなくても相談先はある:法テラスには、条件を満たせば使える無料法律相談があります
まとめ
- 個人再生は、裁判所を通して借金を減らし、残りを原則3年で返す手続き
- 返す額は「借金の額による基準額」「清算価値」(給与所得者等再生では「可処分所得2年分」も)のいちばん高いもの。「誰でも5分の1」ではない
- 使えるのは、継続した収入があり、住宅ローンなどを除いた借金が5,000万円以下の人
- 条件を満たせば、住宅ローンのある家を残せる場合がある
- 信用情報への登録、官報への掲載、保証人への影響などのデメリットもある
私の場合は、約750万円の借金の返済額が約150万円になり、3年間で完済できました。生活を立て直すきっかけになりました。この記事が、今悩んでいる人が自分に合った方法を考える助けになればうれしいです。
参考にした公式情報(最終確認日:2026年10月27日)
- 裁判所「個人再生」
- 裁判所「個人債務者の再生手続」案内資料(PDF)
- e-Gov法令検索「民事再生法」(39条・53条・84条・122条・174条・177条・196条・198条・221条・229条・230条・231条・239条・241条)
- e-Gov法令検索「破産法」(248条・252条・253条)
- 法テラス「無料法律相談・弁護士等費用の立替」
この記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の事情についての法律相談ではありません。制度は改正されることがあるため、最新の情報は裁判所や専門家に確認してください。

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